【所得税コラム】事業倒産と競売──譲渡所得は課税されるのか?

こんにちは。税理士の後藤です。
今回は、「事業が倒産し、担保不動産が競売にかけられた場合に譲渡所得は課税されるのか?」というご相談を受けました。生活再建の途上にある方にとっては、非常に重要なテーマです。


■ 相談内容

ある方が、かつて自営で事業をされていましたが、資金繰りに行き詰まり、結果として事業が倒産。
担保に入れていた自宅土地・建物は、債権者によって競売にかけられました。

ところが、債務が多額だったため、その不動産が競売されても全額を返済することはできず、借金は残ったまま。
現在は借家住まいで、財産もほぼなく、生活に困窮されている状況です。

このようなケースでも、「競売によって売却された土地・建物に譲渡所得税がかかるのか?」というご質問をいただきました。


■ 結論:課税されません(非課税)

このような場合、譲渡所得は課税されません。
所得税法第9条第1項第10号に基づき、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における強制換価手続による資産の譲渡による所得」は非課税とされています。

つまり、「競売によって資産が強制的に処分されたが、なお債務が残り、資力も失っている」という状態では、そこに生じる譲渡所得は所得税の課税対象にはならないのです。


■ 関連法令と参考リンク

  • 所得税法第9条第1項第10号
     → 非課税所得に関する規定です。
  • 国税庁タックスアンサー(No.3105)
     → こちらをご参照ください

■ 注意点

ただし、以下の点には注意が必要です。

  • 任意売却や自己の意思による譲渡は対象外です。
  • 生活実態や債務の状況から、資力喪失の事実関係を確認できる書類を準備することが望ましいです(債務整理書類、破産申立て書、資産目録など)。
  • 不明点がある場合は、税務署や専門の税理士に相談することをおすすめします。

■ まとめ

事業の失敗や倒産によってすでに大きな苦しみを抱えている方に、さらに税金の追い打ちが来る──。
そういった事態にならないよう、税法では一定の救済措置が設けられています。

もし同じようなケースでお悩みの方がいらっしゃいましたら、一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。

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