【税務相談】役員が会社に金銭を貸し付けた場合、利息は必要?

こんにちは、税理士の後藤です。
関与先の方から、こんな質問をいただきました。
「役員が会社にお金を貸した場合、利息は取る必要がありますか?また、利息を取った場合、個人として所得税が発生するのでしょうか?」
非常に実務的かつ重要なご質問なので、今回はこのテーマを取り上げて解説したいと思います。
◆ 会社と個人の立場の違いを押さえましょう
まず大前提として、法人(会社)と個人は別人格です。そしてそれぞれの立場には以下のような違いがあります。
- 会社(法人):利益の追求が存在理由。経済的合理性が常に求められます。
- 個人(役員など):生活の安定が主目的。必ずしも利益追求のみが目的ではありません。
つまり、会社が行う取引については、第三者との取引と同様に、常に合理性が求められるということになります。
◆ 役員→会社への貸付に利息は必要か?
結論から申し上げると、
無利息でも税務上は問題ありません。
役員が個人的な判断で会社に無利息でお金を貸すことは、経済合理性を損なうものではなく、会社にとっては有利な条件です。そのため、税務上はとくに問題視されません。
一方で、これが逆のケース、つまり、
会社→役員にお金を貸す場合は、必ず利息を取る必要があります。
無利息で貸した場合、役員に対する経済的利益の供与(=役員給与の一部)と見なされ、損金不算入や源泉所得税の対象になる可能性があるため、注意が必要です。
◆ 利息を取った場合、個人側の課税関係は?
役員が会社から利息を受け取った場合、それは個人の所得となります。
この所得は通常、次のように取り扱われます:
✅ 適正な利率での貸付:
- 所得の区分:雑所得
- 会社から支払われる利息分に対して、所得税が課税されます。
- 原則として、確定申告が必要です(他の雑所得と合算し20万円超の所得がある場合)。
⚠️ 利率が高すぎる場合:
- 税務上「過大な利息」と認定されると、超過部分は役員給与(報酬)とみなされます。
- 給与扱いとなると、法人側では損金算入が制限される場合もありますし、源泉徴収義務も発生します。
適正利率は一概には言えませんが、市場金利や金融機関の貸出利率を参考にするのが無難です。
◆ 実務上のアドバイス
- 貸付契約書は必ず作成しましょう(無利息であっても)。
- 利率を設定する場合は、市場相場を参考に「妥当な金利」に設定を。
- 利息を受け取った場合は、確定申告の必要性を確認しましょう。
◆ まとめ
項目 | 役員→会社 | 会社→役員 |
---|---|---|
利息の必要性 | 不要でもOK(税務上問題なし) | 必須(無利息だと給与課税リスク) |
個人課税 | 利息を受け取る場合→雑所得 | – |
所得区分 | 雑所得(適正利息) ※過大な場合は役員報酬扱い | – |
法人と役員の関係性だからこそ、曖昧になりやすいお金のやり取り。
取引の妥当性と税務上の取扱いを理解して、正しく対応することが重要です。
ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
この記事は税務の一般的な解説を目的としたものであり、個別のケースについては必ず専門家にご相談ください。
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