パワハラは大企業だけの問題ではない

〜中小企業こそ対策が求められる時代〜
「パワハラ」という言葉をもはや現代の病と言えます。かつては大企業のコンプライアンス問題として語られることが多かったテーマですが、いまや中小企業においても深刻な経営リスクとなっています。
特に、繁忙期などで長時間労働が続き、精神的に余裕がなくなる時期には、職場の空気がギスギスしやすく、パワハラが起こる温床となります。働く環境が荒れることで、社員の離職やメンタル不調、企業イメージの低下など、さまざまな負の連鎖を生むリスクがあるのです。
■ パワハラの定義を明確にする
まずは「パワハラとは何か?」を明確にすることが出発点です。
厚生労働省によると、パワーハラスメントとは:
「職場において、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為、または職場環境を悪化させる行為」
と定義されています。
「指導のつもりだった」「冗談のつもりだった」と加害者が感じていても、受け手が不快に感じた時点でパワハラとなる可能性があることが、この問題の難しさです。
■ 実際に見たパワハラの現場
私自身、かつて勤務していた税理士事務所で、明らかなパワハラの現場を目にしたことがあります。
ある上司が、採用情報などを把握している立場を利用し、仕事中に突然、
- 「●●さんって●●大学出身だよね?」
- 「住んでるのって、確か●●だよね?」
といった“情報をちらつかせる”ような発言をしていたのです。
一見すると雑談のようにも聞こえますが、言われた側が威圧や監視の意図を感じた場合、それは立派なパワハラになり得ます。
■ 指摘されたときの対応が重要
もし社内でパワハラの指摘があった場合、重要なのは「早急な対応」です。
経営者自身が「大したことない」と感じていても、第三者(特に法律の専門家)から見たら極めて重大な問題である可能性があります。迷わず顧問弁護士などの専門家に相談することを強くおすすめします。
■ 再発防止の具体策
再発防止のためには、以下のような施策が有効です。
- 就業規則にパワハラ禁止の明文化
- 従業員への周知徹底(ミーティングや掲示板での共有など)
- 管理職向けのパワハラ研修の実施
- 外部相談窓口の設置(社労士や弁護士など)
大企業に比べ、法務部門や人事体制が整っていない中小企業にこそ、ルールと仕組みの整備が不可欠です。
最後に:人が辞めない職場づくりへ
人手不足が深刻化する今の時代、社員が安心して働ける環境をつくることは、企業の持続可能性を左右する重要なテーマです。
「うちは少人数だから大丈夫」と思っている経営者ほど、一度社内を見渡してみてください。何気ない言動が、もしかするとパワハラとして受け止められているかもしれません。
「気づくこと」「認めること」「対策すること」
この3つの視点を忘れずに、企業としての健全な成長を目指していきましょう。
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