中小企業の企業価値評価の実際 ~現場では「年買法」が主流~

中小企業の事業承継やM&Aが注目される中で、「企業価値をどう評価するか?」というテーマは非常に重要です。書籍やセミナーでは、以下のような3つの評価方法が紹介されることが多いです。

  • インカムアプローチ(DCF法など)
  • マーケットアプローチ(類似企業比較法など)
  • ネットアセットアプローチ(時価純資産法など)

しかし、現実の中小企業に関する現場ではこれらをそのまま使うことは簡単ではありません。特にインカムアプローチマーケットアプローチには、次のような課題が伴います。


◆インカムアプローチの難しさ

DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法などが代表的ですが、実務上は次のようなハードルがあります。

  • 精緻な事業計画の策定が前提
     → 中小企業では、将来予測に十分なデータがなく、現実的ではないケースが多い。
  • 割引率の設定が主観的になりがち
     → 上場企業を参考にWACCなどを設定しても、中小企業にそのまま当てはめるのは無理がある。

◆マーケットアプローチの現実的な壁

上場企業やM&A事例を基にした評価手法ですが、以下のような問題があります。

  • 「類似企業」を見つけるのが困難
     → 規模・事業モデル・地域性などが異なる中で、適切な比較対象を見つけるのは至難。
  • 上場企業のマルチプルを使うことへの違和感
     → 上場企業はガバナンスも資金調達力も異なるため、同じ倍率を中小企業に使うのは無理がある。

◆結果的に主流となる「年買法」

こうした理論的アプローチが現場にそぐわないことから、最終的には**「年買法」**がよく使われるのが実情です。

年買法とは、この方法は非常にシンプルではありますが、中小企業の実情に即していて、買い手・売り手ともに納得感を持ちやすいという利点があります。


◆まとめ:理論と現実のギャップを埋める

もちろん、理論的なアプローチは重要です。しかし、**「実務で使えるか」**という視点で見れば、シンプルで説明しやすい「年買法」が今も多くの現場で使われていることは見逃せません。

中小企業の企業価値評価においては、理論と現場感覚のバランスを取ることが何よりも求められます。

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