事業承継は「早めの準備」が成功のカギ

最近、事業承継のご相談をいただく機会が増えてきました。
経営者の高齢化が進む中、「そろそろ次の代へ…」とお考えになる方が増えているようです。ただし、事業承継には単なる「引継ぎ」以上に、慎重な検討と準備が必要です。
事業承継を考える際には、大きく分けて2つの視点を同時に検討していく必要があります。
① 財産の移転
② 経営の移転
この2つは似ているようでまったく別のテーマであり、どちらか一方だけに偏ってしまうと、承継後のトラブルや想定外の税負担につながることもあります。
【ステップ1】まずは「家系図」の作成から
最初に行うべきは、推定相続人の把握です。そのために家系図を作成し、相続人の範囲や関係性を整理します。
ここで特に重要なのが、後継者がいるかどうかの確認です。
- 後継者が「いる」場合
→ なるべく自社株評価を下げる方向で対策を講じ、税負担を軽減しながらスムーズな承継を目指します。 - 後継者が「いない」場合
→ 事業売却等も視野に入れ、自社株の評価を高く保つ(高くする)ことを考えていきます。
この判断によって、事業承継の戦略は真逆になります。
【ステップ2】決算書を2〜3期分チェック
次に、過去2〜3期分の決算書を確認します。特に以下の点を重点的に見ていきます。
- 貸借対照表(BS)の純資産
- 法人税別表2に記載された株主の状況
- 損益計算書(PL)の営業利益・経常利益
これにより、企業の財務状況や株主構成、利益水準を把握し、今後の自社株評価に与える影響を予測します。
【ステップ3】自社株評価と相続税の概算額の把握
決算書の情報をもとに、自社株の評価額と相続税の概算額を算出します。
この試算によって、現状のまま承継した場合の税負担の大きさを「見える化」し、対策の方向性を具体的に検討できるようになります。
【ステップ4】対策の検討と実行
ここからようやく、「何をすべきか?」の具体的対策に入っていきます。
- 株式の分散防止
- 相続時精算課税制度や贈与税の特例の活用
- 持株会社の設立
- M&Aによる第三者承継の検討 など
いずれの手段を取るにしても、早めの準備が圧倒的に有利です。時間的余裕があればあるほど、選べる選択肢は増え、リスクも回避しやすくなります。
まとめ
事業承継は「財産」と「経営」という2つの要素が複雑に絡み合うテーマです。
どこから手をつけてよいか分からないという方も多いと思いますが、家系図の作成と決算書の確認からスタートすれば、自然と道筋が見えてきます。
弊所では、事業承継の全体設計から自社株評価、税務対策までトータルでご支援しております。
「まだ早いかな…」と思ったときが、実は最適なタイミングです。
事業承継にお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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