企業価値評価の基本②

インカム・アプローチとは何かをわかりやすく解説します
会社を売却するときや、事業承継を考えるとき、「うちの会社はいくらの価値があるのだろう?」と気になる方は多いのではないでしょうか。
その価値を算出する方法のひとつが、今回ご紹介する**「インカム・アプローチ」**です。
インカム・アプローチとは、**その会社が将来どれくらいお金を稼ぐのか(利益やキャッシュフロー)**をもとに会社の価値を評価する方法です。将来の収益力が反映されやすいため、特に成長中の企業や中小企業の評価でよく使われます。
ただし、将来の数字は「予測」に過ぎません。楽観的な数字を使えば高く見えてしまうこともあるため、いかに客観的に評価できるかがポイントになります。
インカム・アプローチの3つの代表的な方法
① DCF法(フリーキャッシュフロー法)
**DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)**は、インカム・アプローチの中でも最も代表的な方法です。
簡単に言うと、
「これから会社が稼ぐであろうお金を、今の価値に置き換える」
という考え方です。
たとえば、5年後に1,000万円を受け取るとしても、「今すぐもらえる1,000万円」とは価値が違いますよね? それを調整して「今いくらの価値があるか?」を計算するのがDCF法です。
このときに使うのが「フリーキャッシュフロー(FCF)」と呼ばれるお金です。
これは、事業活動で得たお金のうち、借金の返済や配当などに自由に使えるお金のことです。
フリーキャッシュフローは、以下のような式で求めます:
コピーする編集する営業利益 ×(1 − 法人税率)
+ 減価償却費
- 設備投資
- 運転資金の増加
そして、これらを「割引率(WACC)」という基準で割り引いて、現在価値を計算します。
② 配当還元法
配当還元法は、会社が株主にどれだけの配当を払うかに注目する方法です。
たとえば、将来毎年50万円の配当がもらえるとすれば、それを現在の価値に換算して「株式はいくらの価値か?」を判断します。
この方法は、毎年安定した配当を出している会社に向いている評価方法です。
ただし、配当を出していない会社や、配当が極端に少ない会社ではこの方法は使いづらいです。
③ 収益還元法
収益還元法は、会計上の利益(たとえば純利益など)に基づいて評価するシンプルな方法です。
DCF法のように複雑な事業計画を作らなくてもよいので、中小企業の実務では使いやすい方法です。
「毎年だいたいこのくらい利益が出ている」という実績をもとに、「将来もこれくらい続くだろう」と考えて評価します。
ただし、成長性や将来の変化はあまり反映されないため、安定した業績の企業に向いています。
まとめ:会社の“稼ぐ力”を評価するのがインカム・アプローチ
インカム・アプローチは、会社がこれからどれだけお金を生み出せるかに注目した評価方法です。
- 将来の利益やキャッシュフローが反映される
- 成長企業の価値を適切に表しやすい
- 反面、予測の信頼性や前提条件が評価のカギになる
特にDCF法は、会社の本当の実力を見抜くために重要な考え方ですが、専門的な知識とデータが必要です。税理士や専門家と連携しながら評価することをおすすめします。
次回は、マーケット・アプローチについて解説します。
これは、「他の会社はいくらで売れているのか?」「同業の上場企業と比べて自社はどうか?」といった市場の視点から会社の価値を考える方法です。お楽しみに!
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