企業価値評価の基本④

インカム・マーケット・ネットアセット、それぞれの違いと使い分け

これまで3回にわたり、会社の価値を評価する方法を紹介してきました。

  1. インカム・アプローチ(将来の利益をもとに評価)
  2. マーケット・アプローチ(他の会社と比べて評価)
  3. ネットアセット・アプローチ(いま持っている資産で評価)

今回はその総まとめとして、3つの方法の違いを比較して、どんなときにどの方法が向いているのかを整理してみましょう。


3つの評価方法を比較してみると?

以下の図をご覧ください。

この表は、それぞれの評価方法の特徴をわかりやすく示したものです。

比較ポイントインカムマーケットネットアセット
客観性▲ やや主観あり★ 高い★ 高い
市場の価格を反映できるか○ 一部反映★ よく反映する▲ あまり反映されない
将来の稼ぐ力を反映できるか★ よく反映する○ 一部反映▲ ほとんど反映されない
会社独自の特徴を評価できるか★ 反映しやすい▲ やや難しい○ 一部反映される

どの方法が「正解」なのか?

正直に言ってしまうと――

どれか1つの方法だけが正しいということはありません。

それぞれに得意・不得意があるからです。

たとえば…

  • インカム法は、将来の利益をきちんと予測できる会社に向いています。
  • マーケット法は、同業の上場会社があるときに使いやすいです。
  • ネットアセット法は、資産が多い会社や赤字の会社でも評価できます。

実務ではどうしてるの?

企業価値評価ガイドラインでは、次の2つの方法をすすめています。

① 併用法(へいようほう)

いくつかの評価方法を同時に使って、
「だいたいこのくらいの価値かな?」という**幅(レンジ)**で見積もる方法です。

→ たとえば、「2億〜2.5億円くらい」といった感じです。

② 折衷法(せっちゅうほう)

いくつかの評価方法を使って、それぞれに**重み(割合)**をつけて平均を出す方法です。

→ たとえば、「インカム6割、マーケット3割、ネットアセット1割」で評価する、など。


まとめ:大切なのは「目的」と「状況」に合った選択

評価方法はどれも一長一短。
だからこそ大事なのは、その会社の状況や目的に合った方法を選ぶことです。

  • どんな業種?
  • 今は成長期?安定期?
  • 他に似た会社はある?
  • 将来の計画はしっかりしている?
  • 資産はたくさんある?

このような情報をもとに、一番ふさわしいアプローチを見極めることが成功へのカギになります。


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