個人事業主が法人成した場合、どのような変化があるのか?

事業を続けていく中で、「そろそろ法人化した方がいいのでは?」と考えるタイミングが訪れます。
実際、売上の増加や取引先の要請、節税効果などをきっかけに、個人事業から法人(株式会社・合同会社など)へ移行するケースは少なくありません。
では、個人事業主から法人化すると、具体的にどのような変化があるのか?
今回は、その実務的な違いを整理して解説します。
1. 個人事業主の場合の流れ
個人事業主は、暦年(1月〜12月)の1年間で得た所得をもとに、翌年3月15日までに所得税の確定申告を行います。
また、一定の条件を満たす場合は、消費税の申告も必要になります。
売上の入金は個人名義の口座に入るため、事業者本人が自由に引き出し、
事業経費にも生活費にも充てることができます。
つまり、事業と生活のお金が一体化しているのが個人事業主の特徴です。
人を雇用していない場合は、経理も比較的シンプルで、
会計ソフトで収支を記録しておけば、確定申告も比較的容易に対応できます。
2. 法人成した場合に起こる主な変化
一方で、法人成りすると、手続きや管理業務が一気に増えます。
代表的な違いを順に見ていきましょう。
(1)会計期間と申告の違い
個人事業は「1月~12月」という暦年が固定ですが、
法人の場合は、決算日を自由に設定できます。
例えば「3月決算」「9月決算」など、事業の繁忙期や資金繰りを考慮して決めることが可能です。
法人は決算日から2か月以内に、
法人税(および消費税・地方税)の申告・納付を行う義務があります。
個人とは異なり、決算書・申告書ともに高度な知識が必要なため、
多くの法人が税理士に依頼しています。
(2)お金の性質が変わる:「法人のお金」と「社長個人のお金」
個人事業では、入金されたお金=自分のお金でしたが、
法人化すると、入金はすべて法人のお金になります。
代表取締役(社長)は、会社から「役員報酬(給与)」としてお金を受け取り、
その中から生活費をまかなう必要があります。
つまり、会社と個人の財布が完全に分かれるのです。
(3)給与計算・源泉徴収・社会保険の加入義務
社長に給与を支払う以上、給与計算業務が発生します。
給与を支払えば、毎月の給与から
- 所得税(源泉税)
- 社会保険料(厚生年金・健康保険)
- 住民税(特別徴収)
などを控除し、会社が国や自治体に納付しなければなりません。
これに伴い、
- 源泉所得税の納付(原則毎月または年2回)
- 住民税の特別徴収の支払
- 社会保険料の事業主負担分の支払
など、定期的な事務手続きが発生します。
さらに、年末には年末調整を行い、翌年1月31日までに法定調書の提出が必要です。
3. 顧問税理士をつけた方がよい理由
個人事業主は、帳簿付けや確定申告を自分で行うことも可能ですが、
法人の場合は、税務・会計・社会保険の各分野で専門的な処理が求められます。
特に、
- 決算書・申告書の作成
- 役員報酬の設定(税務戦略上の最重要ポイント)
- 消費税・社会保険・源泉税の管理
- 銀行融資や助成金の申請時の対応
など、専門家の関与があることで大きな安心感とメリットが生まれます。
したがって、法人成りをしたら税理士との顧問契約を強くお勧めします。
4. まとめ:法人化は「責任と信頼の分岐点」
個人事業から法人になると、
「手続きが増える」「管理が大変になる」という面は確かにあります。
しかしその一方で、
- 社会的信用の向上
- 節税の可能性
- 取引拡大のチャンス
- 経営の見える化
といった大きなメリットもあります。
法人化は、単なる形の変更ではなく、
“経営者として次のステージに進む”ための通過点です。
しっかりとした準備と専門家のサポートを受けながら、
より良い経営体制を整えていきましょう。
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