控除対象外消費税額等とは?その会計処理と税務上の取扱いをわかりやすく解説

今回は、法人決算において見落としがちな論点である「控除対象外消費税額等」について、税務と会計の視点からわかりやすく解説いたします。


◆ 消費税の経理方式には2種類ある

企業会計では、消費税の経理方法として以下の2つの方式から選択することができます。

  • 税抜経理方式:消費税を区分して記帳する方法
  • 税込経理方式:消費税も含めた金額で記帳する方法

ここでは「税抜経理方式」を採用しているケースを前提に説明を進めます。


◆ 仕入税額控除の制限とは?

通常、課税売上に対応する課税仕入に係る消費税は、申告時に仕入税額控除として控除されます。

しかし、次のいずれかに該当する場合は注意が必要です。

  • 課税売上高が5億円を超えている場合
  • 課税売上割合が95%未満の場合

このようなケースでは、仕入税額の全額を控除できず、課税売上に対応する部分だけが控除対象となります(消費税法第30条)。
この控除できなかった消費税が「控除対象外消費税額」です。


◆ 控除対象外消費税額等の会計・税務処理

控除対象外消費税額等は、「資産に係るもの」か「資産以外に係るもの」かによって処理が異なります。


【1】資産に係る控除対象外消費税額等

以下のいずれかの方法で損金算入します。

(1)取得価額に算入

資産の取得価額に控除対象外消費税額等を含めて計上し、以降の事業年度で減価償却費として損金算入します。

(2)当期損金に算入(損金経理が必要)

以下のいずれかに該当する場合、損金経理の要件を満たせば、当期の損金として処理可能です。

  • イ:当期の課税売上割合が 80%以上
  • ロ:棚卸資産に係るもの
  • ハ:1資産あたりの控除対象外消費税額等が20万円未満

(3)繰延消費税額等として資産計上

上記いずれにも該当しない場合、「繰延消費税額等」として資産計上し、以下の算式で損金算入します。

損金算入限度額 = 繰延消費税額等 ×(事業年度の月数 ÷ 60)
※資産取得年度はさらに1/2


【2】資産以外に係る控除対象外消費税額等

資産に係るもの以外、たとえば外注費や通信費などの経費に含まれる控除対象外消費税額等については、全額損金算入可能です。

ただし、交際費に係る控除対象外消費税額等は、交際費本体に加算して交際費等として取り扱い、損金不算入の計算に影響する点に注意が必要です。


◆ まとめ

区分控除対象外消費税額等の処理
資産に係るもの①取得価額に算入 ②当期損金算入(要件あり) ③繰延処理
資産以外に係るもの全額損金算入(交際費は要注意)

◆ 実務上のアドバイス

  • 資産購入時は、「課税売上割合」や「金額の大小」によって処理が大きく異なるため、慎重な判定が必要です。
  • 課税売上割合が95%を切る企業では、消費税申告書の中間チェックや仮払処理の検証が特に重要です。
  • 会計処理を誤ると、税務調査で否認されるリスクがあるため、期末には専門家とともに確認することをおすすめします。

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