腹落ちが未来を創る──いま注目すべき「センスメイキング理論」とは?

先日、YouTubeを視聴していたところ、たまたま目に留まった動画がありました。
それは、あの『世界標準の経営理論』の著者としても知られる早稲田大学大学院教授・入山章栄氏によるものでした。
動画の中で入山氏は、「今の日本に必要なのは“センスメイキング理論”である」と強調されていました。
この「センスメイキング理論」──あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、私はこの話を聞いて、強く共感を覚えました。
今回はこの理論について、私なりに整理してみたいと思います。
センスメイキングとは「腹落ち」のプロセス
入山氏の著書によれば、センスメイキングとは簡単に言えば「納得」、もっと踏み込めば「腹落ち」のことです。
つまり、センスメイキング理論とは、「腹落ちの理論」なのです。
人や組織が行動を起こすには、「納得感」が必要です。単に論理的に正しいだけではなく、「腹の底から納得できる」ことが重要です。
この理論は、以下の3ステップで構成されます。
- 環境の感知(Sense)
- 解釈・意味づけ(Make sense)
- 行動・実行(Act)
特に重要なのが、2番目の「解釈・意味づけ」のフェーズ。
入山氏はここで「足並みをそろえること」が最も大切だと指摘します。
つまり、組織においては、個々の解釈がバラバラではなく、「意味の共通化=共通のストーリーを持つこと」が求められるのです。
組織を動かす「ストーリー」の力
組織が一つの方向を向くためには、ストーリーが不可欠です。
私は以前、官民ファンドである産業革新機構に勤めていた際、当時のCEOである能見氏が、よく「ストーリーテリングの重要性」を語っていたことを思い出します。
ファンドの投資判断や改革案は、単に合理的であるだけではなく、世論に「納得」してもらう必要がある。そのために「ストーリーで伝える力」が求められていたのです。
同様のことは、名だたる経営者たちにも共通しています。
たとえば、日本電産の永守重信氏。
そしてソフトバンクの孫正義氏。
彼らは皆、自らのビジョンを熱く語り、人を巻き込む力=ストーリーテリング力に長けた経営者です。
特に孫氏は、「未来」を語るときに、必ずそこにストーリーを添えます。
それが周囲を納得させ、味方を生み、組織を前進させる原動力となっているのです。
未来は「ストーリー」でつくれる
未来は予測するものではなく、語ることで創られていくものだと、私は感じます。
そしてその語り方には、「腹落ち=センスメイキング」が欠かせません。
いま私たちが問うべきは、
「自分のビジョンは、相手の腹に落ちているか?」
「組織の行動は、納得の上に成り立っているか?」
ということです。
「腹落ちをつくる力」、
それこそが、これからのリーダーシップに最も求められるスキルなのかもしれません。
おわりに
今の日本社会、そして中小企業経営の現場でも、
複雑な状況下で「正解がない」場面に直面することが増えています。
そんな時こそ、理屈ではなく「納得」、つまりセンスメイキングの力が問われます。
私も、経営支援の現場で「腹落ちする提案」を常に心がけ、クライアントと共に未来を描いていきたいと思います。
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