賃上げの本質を考える 〜人材から「人財」へ〜

昨今、政府は「賃上げ」を強く後押ししています。たとえば、中小企業向けには「賃上げ促進税制」などが整備され、制度面でも賃上げを推進する流れが強まっています。
このような国の姿勢からも分かる通り、「人への投資」がこれからの企業経営において不可欠なテーマとなっています。
「人材」ではなく「人財」
かつては「人材」という言葉が使われていましたが、最近では「人財」という表現も耳にするようになりました。
これは単なる言葉遊びではなく、「人は企業にとっての資源ではなく、財産であり宝である」という意識の現れです。
しかし、ここで立ち止まって考えたいのは、果たして「ただ働いているだけで人は本当に財産(人財)と言えるのか?」という問いです。
経営相談でも多い「人が育たない」という悩み
私たちが日頃行う経営相談のなかでも、「人がなかなか育たなくて困っている」というお悩みは非常に多く寄せられます。
- 採用してもすぐ辞めてしまう
- 教えてもなかなか覚えてくれない
- 経験を積んでも、責任ある仕事を任せられるレベルに至らない
こうした悩みは、決して経営者だけの問題ではありません。働く側も、どう学べばいいのか、どう成長していけばいいのか、模索しているケースが多くあります。
人財への道は「学習と成長」にある
企業にとって人件費はコストである一方で、投資でもあります。ただし、投資であるためには、リターン(成果)を見込めなければなりません。
特に中小企業では即戦力の採用は難しく、採用にはコストがかかり、教育にも時間と手間がかかります。つまり、「人が人財となるには、成長が不可欠」であり、その成長のために必要なのが「学習」です。
学習には大きく二つの形があります。
- 会社が用意する教育
- 本人による自主的な学び
このどちらも欠かすことはできません。特に「働きながら学ぶ」姿勢は、本人の成長を促し、企業の生産性向上にも直結します。
賃上げは「学習支援」とセットで考えるべき
現在、国の制度には設備投資に対する税制優遇は多数存在します。一方で、「人の学習」や「人的成長」に対する支援は、まだまだ手薄だと感じます。
「賃上げ」とは、単に給与を上げるというだけでなく、その人が生み出す価値=生産性を高めることで、はじめて持続可能になります。だからこそ、企業が「学習機会」を提供し、社員が「働きながら学び、成長する」仕組みづくりが急務です。
おわりに
本当の意味での「人財育成」は、学習と成長を前提にした長期的な視点からの人への投資です。
そして、経営者が「育てる覚悟」を持ち、社員も「学ぶ覚悟」を持つこと。両者がその責任を果たすことで、はじめて組織は強くなります。
「賃上げ」はゴールではなく、その土台となる「成長支援」こそが、企業の未来をつくる鍵になると私は考えています。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。