【相続対策】相続直前の現金引き出しは要注意

相続税のご相談を受けている中で、よく話題になるのが「相続開始直前に引き出された現金」の取り扱いです。
例えば、相続開始の1か月前に被相続人の銀行口座から1,000万円が引き出されていたとします。しかし、その使途が不明である場合、税務上どのように扱われるのでしょうか?
相続人と税務署、主張の食い違い
相続人としては、
「引き出した現金は被相続人本人が管理していたものであり、その後どう使ったかは分からない。不明なものを相続財産に計上することはできない」
と主張するかもしれません。
一方で税務署(課税庁)は、
「現金は引き出されているが、その後使われた形跡が見られない。つまり、その1,000万円は亡くなった時点でも手元に残っていたはずだ」
と主張する可能性があります。
このように、お金の動きが不透明な場合は、納税者と税務署との間で見解の相違が生まれやすくなります。
相続税法上の考え方
現行の相続税制では、相続開始前に引き出された現金に対して、単に「引き出された」という事実だけでは相続財産とは認定されません。
しかし、その現金が相続開始時点に存在していたと「推認」できる状況がある場合は、相続財産として加算される可能性があるのです。
このような「推認課税」が行われるか否かは、間接的な証拠(間接事実)の積み重ねによって判断されます。
納税者側の対応ポイント
引き出された現金が相続開始時点に存在していなかったと主張するには、資金の使途を具体的に説明できるかがカギになります。以下のような事実が確認できると、課税リスクを下げることができます。
① 新たに資産を取得した事実
たとえば、引き出したお金で不動産や車などを購入していた場合、それらの資産が「形を変えた財産」として把握できます。
② 高額物品やサービスを購入した事実
高級家具、旅行、介護サービス、医療費等に使用されていれば、その支出記録が重要な証拠になります。
③ 貸付けや贈与をした事実
第三者への貸付けや生前贈与であった場合は、契約書や振込記録等を準備しましょう。
④ 生活費や租税公課の支出
日常生活費、入院費、固定資産税等の支出も、明細や領収書が残っていれば立派な説明材料になります。
まとめ
相続直前の現金の引き出しについては、「とりあえず引き出しておいた」という状況が、後に大きな税務リスクを生むことがあります。
相続が近づくと、感情的にも混乱しやすく、金銭管理が曖昧になりがちですが、引き出しの理由と使途の記録をしっかり残しておくことが、将来的なトラブル回避につながります。
ご家族で財産管理を見直す機会として、ぜひ一度、専門家へのご相談をおすすめします。
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