【相続関連⑦】相続で最も注意すべき「名義預金」と「名義株式」とは?

こんにちは。
税理士、後藤真吾です。

相続のご相談で、私が必ず確認するのが「名義財産」です。
中でも特に重要なのが、名義預金と名義株式の2つです。

これらは見落とされやすいだけでなく、税務調査で最も指摘されやすいポイントでもあります。
今回は、相続税対策・申告時に知っておくべき「名義財産」の基本と、判断のポイントをわかりやすく解説します。


■ 名義預金とは?

「子ども名義の通帳に毎年100万円ずつ入れてきた」
「孫の教育資金として口座を作った」
こういったものが、「名義預金」の典型です。

見た目は子や孫の財産でも、実際には…

  • 被相続人(親)が資金を出し
  • 被相続人が管理・運用し
  • 被相続人が自由に出し入れできた

という場合、実質的には“被相続人の財産”とみなされ、相続税の課税対象になります。


■ 名義預金かどうかの判断ポイント

以下のような場合は、名義預金として見なされるリスクが高いです:

✅ 通帳や印鑑を親が管理していた
✅ 子ども自身はその口座の存在すら知らなかった
✅ 贈与契約書など、証拠が一切ない
✅ 入金の目的が毎年同じで形式的だった(暦年贈与のつもりなど)

☝ 「あげたつもり」「贈与したつもり」は通用しません。
形式と証拠がなければ、贈与ではなく「名義預金」として相続財産に加算されます。


■ 名義株式とは?

名義株式とは、「株主名簿には子どもや他人の名前が書かれているが、実質的には被相続人が出資・支配していた株式」のことです。

これは主に中小企業でよく見られるケースで、

  • 名義は長男、実質は社長(被相続人)がすべて決めていた
  • 配当や議決権行使もすべて社長がしていた
  • 出資金は社長の資金だった

というように、名義と実態が異なる場合は、社長=被相続人の所有株として相続財産に計上しなければなりません。


■ なぜ重要なのか? 〜 税務調査でよく指摘されるポイント 〜

相続税の実地調査で、税務署が特に注目するのがこの名義財産の有無です。

名義預金や名義株があると、
✅ 申告漏れとして追徴課税の対象になる
✅ ペナルティとして過少申告加算税・延滞税が課される
✅ 相続人の信頼関係にヒビが入るケースも…

こういったリスクを防ぐためには、生前からの名義整理と、証拠の整備が不可欠です。


■ 名義財産を正しく整理するには?

当事務所では、次のような流れで対応します:

① 家族名義の預金や株式の洗い出し
② 入出金履歴や管理状況の確認
③ 贈与契約書の有無など「贈与の実態」の精査
④ 相続財産に加算するか否かの判断と対策

✅ 場合によっては、過去数年分の通帳をすべて確認することもあります。
✅ 曖昧なまま申告すると、税務署は「ある」と仮定して調査に入ってきます。


■ まとめ:名義財産は「知らなかった」では済まされない

相続税の申告において、「名義預金」「名義株式」は最重要ポイントです。

✔ 名前だけ借りていた
✔ 生前に子ども名義で準備していた
✔ 申告しなくてもバレないと思っていた

こうした“つもり”の贈与は、相続財産としてしっかり課税されます。
だからこそ、専門家によるチェックと、事前対策がとても重要です。

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