【税務ブログ】法人税別表二とは?~同族会社か否かを明らかにする重要書類~

会社経営や税務に携わる方であれば、「法人税別表二」という書類を一度は聞いたことがあるかもしれません。
しかし、「何のために提出するのか?」「どこをどう見るのか?」といったことは、意外と知られていないかもしれません。
今回はこの「法人税別表二」について、基本的な考え方から実務上の注意点までを分かりやすく解説します。
■ そもそも「法人税別表二」とは?
法人税の申告書には、会社の財務・税務の実態を把握するために多数の別表があります。そのうち別表二は「同族会社等の判定に関する明細書」です。
法人税法では、「同族会社」と「非同族会社」で適用される税制上の取扱いが異なる場面があります。たとえば、行為計算の否認(法人税法第132条)などが代表例です。
したがって、その法人が同族会社に該当するか否かを明らかにする必要があり、その根拠を示すのが別表二なのです。
■ なぜ「同族会社かどうか」が重要なのか?
税務当局は、経営の意思決定が少数の関係者によって左右される会社(=同族会社)に対して、一定の慎重な目線を持って対応します。
というのも、以下のようなリスクがあるからです。
- 身内や親しい者同士で意思決定が行われるため、第三者的なチェック機能が弱い
- 税負担を不当に軽減する目的で、経済合理性に欠ける取引がなされる可能性がある
このような理由から、同族会社には法人税法上の特別ルールが適用されることがあり、その前提として「同族会社か否か」の判断が必要なのです。
■ 別表二の記載内容とは?
別表二には、主に以下の情報を記載します。
項目 | 内容 |
---|---|
株主の氏名または名称 | 株主が誰かを明記 |
所有株式数 | 各株主が保有する株式数 |
所有議決権数 | 議決権の数(株式=議決権とは限りません) |
株主間の関係性 | 親族(配偶者・兄弟姉妹・親子など)であるか否か |
グループの区分 | 同一の利害関係者グループであるかどうか |
この記載により、「上位3グループ」で「議決権の過半数」を持っているかどうかを判定できます。
■ 「同族会社」のざっくりとした定義
実務上よく使われる判定基準は以下のとおりです。
- 株主等を関係者グループ(親族・同族など)ごとに分類する
- そのうち議決権上位3グループの合計で過半数(50%超)を占めていれば、同族会社と判定されます
特に注意が必要なのは、「親子や夫婦などの関係性がある株主は同一グループとして扱う」という点です。
例えば、父・母・子がそれぞれ30%ずつ株を持っていた場合、個別に見れば過半数未満ですが、「親子」という関係性で1グループとみなされ、合計で90%となり「同族会社」と判断されます。
■ 別表二は“株主名簿の代用”
外部から見れば、別表二は税務署に提出する「簡易な株主名簿」のような役割を果たしています。
上場企業であれば株主情報は広く公開されますが、非上場企業ではその実態が不透明になりがちです。
そこで税務署は、別表二を通じてその会社の支配構造を把握し、適切な課税が行えるようにしているのです。
■ 実務での注意点
- 新規設立や株主構成変更時は、別表二の記載ミスに注意
- 株主間の親族関係の把握が甘いと、同族会社判定を誤る
- 同族会社に該当すると適用される制度がある(留保金課税など)ため、戦略的に株主構成を設計する必要あり
■ まとめ
法人税別表二は、会社の“支配関係”を明らかにし、同族会社か否かを判定するための重要書類です。
記載内容によって税務上の扱いが変わることもあるため、
税理士や専門家と連携し、正確に・戦略的に対応することが重要です。
同族会社のリスクや制度上の注意点についてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
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