ミニマムタックスとは ― 大きな売却を予定している方へ

2025年分の所得税から、「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」(通称:ミニマムタックス)という制度が始まりました。
さらに2026年3月31日に成立した税制改正により、2027年分からは対象となる範囲が大きく広がります。①自社株式の売却や②不動産の売却を予定している方は、内容を確認しておく必要があります。

1.制度ができた理由

給与や事業の利益にかかる所得税は、金額が大きくなるほど税率が上がり、最高で45%になります。
一方、株式や不動産を売って得た利益は「分離課税」といって、金額がいくら大きくても税率は約20%(所得税15%+住民税5%)で変わりません。

そのため、所得が1億円を超えるあたりから、所得が大きい人ほど税の負担率が下がるという逆転が起きていました。これを「1億円の壁」といいます。この逆転を是正するために作られたのが、ミニマムタックスです。

2.計算の仕組み

この制度は、本来納める所得税額と、最低限納めるべき税額を比べ、不足している分を追加で納めるという仕組みです。計算式は次のとおりです。

(基準所得金額 - 特別控除額)× 税率 - 通常の所得税額 = 追加で納める税額
※ 計算結果がプラスになった場合のみ、その差額を追加で納めます。

「基準所得金額」とは、その年の所得の合計額です。通常は確定申告が不要な上場株式の配当や売却益も、ここでは合計に含めて計算します。ただし、NISAの非課税分や、預金の利子などの源泉分離課税の所得は含みません。

3.2027年分から対象が広がります

 2025年・2026年分2027年分以後
特別控除額3億3,000万円1億6,500万円
税率22.5%30%
対象となる目安
(株式の売却益などだけの場合)
およそ10億円超およそ3.3億円超

対象となる所得の目安が、3分の1近くまで下がります。これまでは一部の資産家に限られた制度でしたが、会社を譲渡(M&A)する経営者の方や、まとまった不動産を売却する方にも関係する制度になった、というのが今回の改正の要点です。

4.注意が必要な方

  • 自社株式の譲渡(M&A)や事業承継を検討している
  • 大きな不動産の売却を予定している
  • その年だけ、所得が数億円になる見込みがある

一方、給与や事業の所得だけの方に追加の税金が生じることは、基本的にありません。もともと最高45%の税率が適用されているためです。また、ふるさと納税などの所得控除によって、この追加税額を減らすことはできません。

5.実行する時期によって税額が変わります

同じ売却であっても、2026年中に実行するか、2027年以後になるかで税負担が変わる場合があります。譲渡契約の時期や後継者の準備状況とあわせて、早めに試算しておくことが有効な対策になります。

影響があるかどうか気になる方は、お気軽にご相談ください。おおよその所得の見込みを伺えれば、対象になるかどうかをご説明できます。

※本記事は2026年9月時点の法令等に基づいています。個別の判断は必ず担当の税理士にご確認ください。

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