企業価値評価の基本③

マーケット・アプローチという企業価値の測り方を解説します

会社を売るとき、「うちの会社はいくらくらいで売れるのか?」と考える方は多いと思います。
そのときに使える方法のひとつが、今回ご紹介する**「マーケット・アプローチ」**です。

この方法は一言でいうと、

似たような会社がいくらで売られているかを参考にして、自分の会社の価値を決める方法」です。

これは、マンションの価格を決めるときに「近くの似た間取りの部屋が3,000万円で売れたから、うちもそのくらいかな」と考えるのと似ています。


マーケット・アプローチってどんな方法?

マーケット・アプローチは、実際に市場で売買されている情報を参考にする方法です。たとえば、

  • 上場している同じ業種の会社
  • 過去に売却された似たような会社

などと比べることで、今の相場に基づいて、会社の価値を「見積もる」やり方です。

良いところ(メリット)

  • 実際の「取引価格」を参考にするので、客観的で納得されやすい
  • 数字で比較できるため、シンプルでわかりやすい

注意点(デメリット)

  • 似たような会社が見つからないと、比較が難しい
  • 会社独自の強み(ブランド力、技術力など)が、うまく反映されないことがある
  • 比較対象の会社と、成長スピードやビジネスモデルが違うと、正確な評価になりにくい

代表的な方法:「類似上場会社法(倍率法)」

マーケット・アプローチで特によく使われるのが、**「類似上場会社法」**です。
これは、上場している同じような会社と比較して、自社の価値を計算する方法です。

「倍率法(マルチプル法)」とも呼ばれます。

簡単に言うと…

  1. 似た上場企業を選びます(同じ業種・同じ規模など)
  2. その企業の「株の時価総額 ÷ 利益」で“倍率”を出します
    たとえば、株の時価総額が10億円で、年間の利益が1億円なら「倍率=10倍」
  3. その倍率を、自社の利益にかけて価値を出します
    自社の利益が3,000万円なら、3,000万円 × 10倍 = 3億円が会社の評価額

つまり、

「似た会社がこのくらいの価値だから、うちもこのくらいかな?」
という、とても実践的でわかりやすい方法なのです。


どんな会社に向いている?

  • 同じような業種や規模の上場企業がある会社
  • 安定して利益が出ている会社
  • M&Aで価格の「相場感」を知りたいとき

逆に、スタートアップや、ユニークすぎるビジネスをしている会社にはあまり向いていません
他に比較できる会社がないと、正確な評価ができないからです。


まとめ:相場から会社の価値を測る方法、それがマーケット・アプローチ

マーケット・アプローチは、**「まわりの会社はいくらで売れているか?」**を参考にして、自分の会社の価格を考える方法です。
不動産や中古車の売買と同じように、「相場」を知ることで、大きなズレのない現実的な金額を導くことができます。

ただし、自社の強みや独自性は数字に出にくいので、他の評価方法と組み合わせて使うのが理想的です。


次回は、3つ目の評価方法「ネット・アセット・アプローチ」についてご紹介します。
これは、会社が持っている資産と借金をもとに、“今あるものの価値”から会社の値段を計算する方法です。
借金の多い会社、設立したばかりの会社、廃業を考えている会社などではよく使われます。どうぞお楽しみに!

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